「味噌」という文字
昔、味噌のご先祖様が日本に現れた頃、それは「醤」(しょう)と呼ばれていました。
有名な大宝律令(701年)には醤院という制度があり平城京跡から発掘された木簡には
「荒醤」「滓醤」「末醤」など15種類もの「醤」の種類が記録されていました。
平安時代に書かれた「延喜式」(927年)という本には「末醤」「味醤」といった文字が見られます。
さらに時代が下って1546年の記録では「味醤」とあり、そして1597年に「味噌」の文字が現れます。
「末醤」「未醤」「味醤」「味噌」はすべて「みそ」と発音され時代とともに文字だけが変わっていったと考えられています。
ところで、「噌」という文字は意外に珍しい文字です。
「味噌」という身近な食品の名前に用いられていながら、他に用例がないようです。
「噌」の字義を調べてみると「かまびすしい(喧しい)」とあります。
これも難しい言葉ですが、やかましい事、騒々しい事、市人のがやがや言う声のにぎやかな様子を言うのだそうです。
つまり「味噌」とは「味のにぎやかなる物」という事になるのでしょうか。
わかるようなわからないような意味ですが、「味噌汁」を「味のにぎやかな汁」と解釈するのはわかるような気がします。
「味噌」の文字が現れた頃は現代のように料理や料理法が豊富ではありませんから、
味噌を調味に用いた料理には輝くような味の「にぎやかさ」を感じたのかもしれません。
また、味噌という調味料は多種類の材料に用いてもうまく味をまとめてしまいますから、
味噌料理を「味のにぎやかな料理」とするのは現代でも的を得た事かもしれません。