21代目社長と社員でつくる! 400年の発酵屋ブログ
2024.3.21

大量生産時代に活きる発酵食品の智恵

 発酵食品には、とても長い歴史があります。人類の文明発祥の地とされる世界各地に、その地域独特の食材を使った発酵食が存在していますし、それは今も当たり前のように食べ続けられています。

 食文化の歴史とは、食べ物そのものが遺跡から発見されて証明されるようなものではありません。千年前の食べ物は千年前に、一万年前のそれは一万年前に食べてしまっているか、たとえ残ったものがあってもそれはすでに「土」になっています。

 伝統的な食品とは、その歴史的時間の中で、その時代の人々によって消費され、そしてまたつくられるを繰り返し、現在に至っているものです。その繰り返しの歴史とは、その必要性と重要性の証しであり、貢献の証明とさえも言えるのではないでしょうか。

 

 伝統的発酵食品の多くは食品の保存のための工夫としてつくられ、活用されてきました。分析技術も微生物への知識もない時代に、冷蔵庫など無くても食品を保存し、時に美味しく栄養成分も豊かな全く別の食べ物までつくり出しました。気の遠くなるような試行錯誤の末のその手法は、今の時代から見ても理に適った「優れもの」といえるものばかりです。ただし、当然ながらこれらの「伝統的発酵食品」の製造は全て手造りで行う少量生産でした。

 

 しかし、現代はそうではありません。私たちが食べるものの多くは大量陳列された店舗で売られるものか、飲食店においても衛生管理という前処理工程を経た食材でつくられる「安全安心食材」が多くを占めるようになりました。私たちが食べる食べ物は全て商品化され、展示販売を前提にパッケージされるために加工されたものになりました。

 その流れの中で発酵食品さえも発酵という製造工程を経た後には除菌殺菌抗菌し、密閉包装で販売される、いわば「発酵済み加工食品」が当たり前になりつつあります。こうした変化は大量販売のための大量生産を促し、「食の安全」という御旗のもとに、もともと少量生産だった発酵食品の造り方にも変化をもたらしています。

 

 時代の流れは止めるべくもありません。しかしこの流れの中だからこそ、数千年前の人々の工夫によって生み出された発酵菌を生きたまま食べる食品の智恵を活かすときではないかと思います。その智恵を広げる働きが出来たらと考えています。

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