味噌は腐らない、と以前に書いた。
味噌は生きている食品なので熟成を続け、やがて過熟に至り風味が変わり甘味や旨味は低下するが、腐敗することはない。
食品において「腐らない食品」というのは少ない。お正月の「お供え餅」のように、そのもの自体は悪くなっていなくても、有害なカビなどが繁殖して食用には適さなくなるものが多い。
その意味でも味噌は希な食品といえる。
昔は貴重な塩を蓄える手段として、味噌を使ったこともあった。
塩は腐らないが、にがり成分の多い昔の塩は「潮解性」によって空気中の水分を吸って流れ出してしまうので保管が難しかった。戦さに備えてたくさんの兵糧を蓄えねばならなかった時代に、樽で熟成させておけば何年分でも持つことが出来る味噌は重要な戦時物資だった。
昔の人が5年前、10年前に仕込んだ味噌をふつうに食べていて、今は6ヶ月の賞味期間しかない、というのは本来おかしな話である。
おいしく食べられるという意味では間違いではないが、それにしても「6ヶ月」という期間の根拠はうすい。
生(なま)の味噌は腐らない。しかし味は変化する。好みの食べ頃の時期は自ら決めて頂くのが一番である。
(一部の出汁入り味噌など「加熱調味済み食品」には当てはまらないものもあります。そうしたものは表示された賞味期間内に召し上がることをおすすめします。)