21代目社長と社員でつくる! 400年の発酵屋ブログ
2023.1.6

味噌は保存食(黒くて塩っぱくて柔らかい味噌への郷愁)

むかし味噌は備蓄食であり保存性があって「長く置いても腐らない」ことが重宝がられた。

一年に一度仕込んだ味噌を何年も保管し熟成させて「順繰り」に食べた。

食べるものについて何かと不安定な時代に3年分以上の食糧が備蓄されていることはとても心強いことであり、備えでありたしなみでもあった。

そういう時代の味噌に求められたものは、食べものとしての安定性であり、もう一つは調味料としての塩の保存であった。

 

室町後期からの戦国時代にはもしもの時の籠城戦に備え、城郭内に塩の長期保存を目的とした味噌が造られていた。海水から作った昔の塩はニガリ成分が多く強い潮解性(空気中の水分を吸って液化する現象)によって保管が難しかった。そこで味噌、である。

そうした食塩保存用の味噌は、なるべくたくさんの塩を入れた配合で(室町末期の古文書「多門院日記」に配合割合の記述が残っている)仕込まれた味噌は、発酵が遅れるから到底1年や2年では食べる事は出来ない。こうした塩保管用の規格ではない通常の味噌規格も、現在よりは塩分濃度は1割から2割程度は高かったと考えられる。

 

味噌は微生物の発酵によって造られるが、その微生物の活躍を抑制的にコントロールする役割を担っているのが「塩」である。だから昔の味噌では発酵しづらくなってしまう。そこで種水が重要になる。塩は味噌中の水分に溶けて存在し、微生物もその塩水の中で生きている。だから発酵を促すために、塩分を減らすのではなく水分を増やして微生物をなんとかゆっくりであっても活動できるようにしていた。だから3年、5年となったのである。

 

ドロドロした真っ黒でしょっぱい味噌をほんの少し入れて作った味噌汁、今の時代にどれだけの支持が得られるか、試してみるのもなかなか興味深い。

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