気温の高い日が続いている。
今年の特徴は、ただ暑いというだけでなくて、「熱中症」と言われる症状を起こして倒れる人が例年に比べて異常に多いことである。
意外に多いのが、室内での発症である。
炎天下、屋外で運動をしているときに起きるものと考えられていた熱中症は、実はその大部分が室内で起きている。
それも、高齢者や幼児に多い。
これは、急激な暑さの到来、体温調節機能の衰え、未発達による体温コントロールの不具合がその原因と指摘されているが、それだけだろうか。
昔と今の食生活の変化にその原因はないだろうか。
塩は常に悪者であり、高血圧、成人病の元凶とされてきた。
マスコミも、熱中症の予防のために「こまめに水分を摂りましょう」とはいうものの、「同時に塩分も必要だ」とはっきりいえない風潮がある。
ただでさえ「塩分控えめ」を習慣化させられている高齢者は、「塩=毒」の観念が染みついているから、
少しぐらい「塩分も必要」といわれても、まさか塩水を飲む気にはなれない。
水を飲めばいいだろうと水は飲むが、水ばかりは飲めない理由がある。
人間の血液の中のNa(ナトリウム)は、食塩換算にしておよそ0.9%である。これと同濃度の食塩水のことを「生理的食塩水」という。
汗などで血液中の水分が失われて血液中の塩分濃度が濃くなると、「のどが渇く」という自覚症状が出て水分の補給を求めることになる。
逆に水をたくさん飲んで血中の塩分濃度が下がると、「もう飲みたくない、飲めない」となる。
汗をかくと塩分が一緒に体外に出てしまうので、Naの血中濃度はさらに下がり水は飲みたくないし、たとえ飲んでも体内に吸収されなくなる。
だから暑いときには、水と一緒に塩分補給(Na補給)が大事なキーポイントになる。
では塩をペロペロなめることを奨めるかといえば、そうではない。Naに血圧上昇効果があることは間違いがない。
だから血圧降下の働きを持つK(カリウム)を同時に摂ることがバランスの上からも必要である。その理想的比率はNa:K=3:1といわれている。
そこで、「味噌汁」である。味噌汁は生理的食塩水とほぼ同じ、およそ0.9~1%の食塩濃度の味噌の水溶液である。
だから味噌汁を飲んでも「のどが渇く」ことはない。
さらに味噌汁は、穏やかにナトリウムの供給が出来ることに加えて、実はカリウムも多く含む飲み物なのである。
味噌の主原料の大豆は豆類の中で突出してカリウム含量が高い。
さらに、汁の実として「ジャガイモ」「さといも」「豆腐」「わかめ」「ひじき」「ほうれん草」などを使えば、
さらにカリウム豊富な夏向きの味噌汁になる。
日本人には日本人の「夏の過ごし方」がある。
昨今の健康志向や西洋医学とは別な、日本の風土と日本人の体質に根ざした食文化の中に、
暑さや寒さに負けない日本人の健康の秘訣があると思う。
じつは「夏こそ味噌汁」なのである。