味噌は地域性の強い食品であるといわれてきた。
日本全国に味噌はあるのだが、ふるさとの味噌、お袋の味の味噌は人それぞれみんな違うといって良いほどである。それが近頃になって事情が変わってきた。
昔、味噌は近所の酒屋さん、八百屋さんなどで買った。ご用聞きのお兄さんに「味噌もお願いね」といえば、そこの家のいつものお好みの味噌が届いた。
味噌は味噌で、赤みそ、白みそぐらいの区別はしたものの、銘柄、メーカーなどは気にしていない、というのが普通のことであった。地元のメーカーは地元のお客様のために味噌を造った。それが味噌を地域特産の味に育て上げた。
しかし、時代は変わって大手流通業者が食品流通の主導権を握るに及んで、味噌は全国の消費者に向けて造ることとなった。全国に販売する大メーカーが出現した。
当然「誰でも飲める味噌汁」を目指して味付けがなされ、ついに味噌汁は「味噌スープ」となった。そしてそれを造り手皆が目指す風潮がある。
味噌は味噌汁の素、ではない。味噌という単独の調味料がいつの間にか味噌スープの素になってしまうことを怖れなければならない。
それは味噌文化が崩壊する時だからである。