県内各地で大豆の収穫期を迎えています。青源味噌が契約する助川昇さん(74)=大田原市=の圃場でも12月10日、収穫作業が行われ、大豆を刈るコンバインの音が鳴り響きました。
助川さんによると、大豆は完全に乾いた状態でしか収穫ができません。少しでも湿っていると、さやが割れず、コンバインを詰まらせてしまうからです。晴天が続くのを待ち、今年もようやく収穫のタイミングが訪れました。
朝露が乾ききった午前11時、助川さんが操縦するコンバインが圃場へ。茶色い茎には、鈴なりになった大豆。耳元でさやを振ると、カラカラと音が鳴ります。
コンバイン前方の「リール」が回転し、刈り始めると、まるでSL(蒸気機関車)が走っているかのようなシャッシャッという大音が響き、次から次へと大豆の列を収穫していきました。
根元から刈られた大豆はコンバインの中ですりつぶされ、分離された豆だけがタンクの中にたまる仕組みです。コンバインが通った後は、排出された殻や茎が土を覆いました。これらはやがて土にかえり、次の作物をつくるための栄養分となります。こうした営みを繰り返し、圃場の土は何年もかけて、豊かになっていくのだそうです。
コンバインがビービーと音を出しました。タンクがいっぱいになったサインです。軽トラックの荷台に載せたフレコンという袋に大豆を移します。ザーッ。
助川さんは、手のひらにすくった豆に目を凝らし、うんうん、とうなづきました。「いい豆だ。黄色い豆だんべ。タンパク質が多い証拠だ。甘みのある、いい味噌ができるぞ」
フレコンいっぱいに入った大豆に太陽の光が差し込むと、表面がつやつやと輝きました。大豆が「畑のダイヤ」と呼ばれる所以の一つが分かったような気がします。
6月下旬の播種から約半年。助川さんの「土と技術がかみ合わないと、いいものは作れない」という信念のもと、今年も収穫量、大豆の質ともに、例年通りの出来となりました。ですが、記録的な猛暑が続いた今年は、栽培には厳しい気象条件となり、大豆の形状に少しばかりばらつきがみられるそうです。「高温障害。人間と同じ。大豆も熱中症になる」(助川さん)
地球温暖化による日本の農業への深刻な影響は、味噌の原料である大豆の生産現場も例外ではありません。それでも「五感を活用して、作物と対話しながら、いいものをつくる。これはもう使命感でしかない」と助川さん。
農家の皆さまのたゆまぬ努力が、青源の味噌造りを支えてくれているのです。