味噌といえば味噌汁、である。
味噌は味噌汁をつくるための、いわば「味噌汁の素」だと思っておられるお客様もある。
ここでいうまでもないことだが、味噌は単に味噌汁の素ではない。
味噌汁は味噌を使った大事な調理例のひとつではあるが、味噌は味噌汁のためだけにつくられているものではない
つくられているものではないと言いきったものの、実はそのためにつくられた味噌もあるから事情はややこしい。スーパーの棚に並んだ「ダシ入り味噌」などがそうである。
「ダシ入り味噌」とは、簡単に言えば種々の調味料をあらかじめ味噌に添加してある調味味噌の一種である。味噌を造った後に加工を加えた「調味味噌」だから、「生の味噌」ではない。
生の味噌とは、味噌を醸造した課程で活躍した微生物が生きたまま残っている状態の味噌である。いわば生き物だから生体としての酵素を持っており、そこに様々な調味料などを加えても、それらをどんどん分解してしまう。
せっかく入れたはずのカツオ風味調味料の味もコンブのうまみ成分も分解を受けて、添加した時の味とはちがってきてしまうのである。それでは困るので、味噌を80℃ぐらいまで加熱して味噌中の微生物を殺菌し酵素活性を失活させることで初めて調味料の味を残すことが出来る。
これによっておいしい味を付け足すことが出来るのだが、それと引き換えに味噌は生き物ではなく単なる「味噌味の食品」となってしまう。その食品は味噌の味はするが、生きた味噌の働きはしなくなる。
便利なダシ入り味噌を排斥するつもりはない。現代の生活に必要なものでもある。
しかし、千年を超える歴史を持つ発酵食品の生味噌と、それを加工し調味したものも同じ味噌だと理解されることは残念である。
生きている味噌には生きている味噌にしかないすばらしい価値がある。生きている味噌を食べることは、必ず栄養成分以上の力になる。
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