「おいしい味噌汁はどうやって作ればいいのですか?」という質問に答えるのは難しい。
誤解を恐れずにいえば、おそらく「おいしい味噌汁」は作ろうとしてできるものではない、という可能性があるからである。
伝統的にいえば味噌汁の作り方はもともと千差万別いろいろあって、決まりはない。
いつの頃からだろうか。
「味噌は煮立てないこと」「煮えばなで火を止めろ」「ダシは鰹と昆布の一番だし」「煮返した味噌汁はおいしくない」「分量を量って家族の人数分作る」・・・。
味噌汁はもともとそんなに気を遣って作るものではなかった。
当たり前のごはんの添え物として、せめて「お付けの実」を何にしようかとは悩んだものの、あとはいつも一緒。 大きめの鍋で作っておかわり自由、残りはポチのごはんになった。
時代は変わったからすべて昔のままがいいという訳もないが、思い出に残るおいしい味噌汁、お袋の味はそういうところにあった。
調理法や提供の仕方に厳密にこだわることが「おいしい味噌汁」に直結するとはまったく限らない。
「味噌汁がおいしい」とはどういうことか。
日本人が日本食の中でホッとできる幸せな瞬間。どんな時に誰と、誰が作ってくれたのだろうか。そんな情景の中に「おいしい味噌汁」がある。
別に豪華ではないけれども家族揃っての団欒の食卓。普通の食事の幸せの瞬間。その時の味噌汁は間違いなくおいしい。
私たちは、そんな時に飲んでもらえて「おいしい!」と言っていただける瞬間を夢見て、一生懸命味噌を造っている。